刑事責任能力とは刑事責任を負うことのできる能力をいい、これを欠いた心神喪失状態で犯罪を実行しても処罰されない(刑法39条1項)。判例によれば、心神喪失とは精神の障害により、ものごとの是非・善悪を弁識する能力がないか弁識に従って行動を制御する能力がない状態をいう。責任能力が著しく減少した場合を心神耗弱といい、刑は軽減される(同2項)。重大な犯罪の場合には、心身喪失者医療観察法の対象となる。14歳未満の者は責任能力がない(刑法41条)。訴訟能力とは訴訟を進めるために必要な被告人の精神能力をいい、具体的には被告人としての重要な利害を弁別し、それに従って相当の防御をすることのできる能力をいう。これを欠くと公判手続きは停止される(刑事訴訟法314条1項)。刑事責任能力は犯罪行為時、訴訟能力は裁判時の精神状態を問題にする。