無実の罪を着せられること。犯人の自白と犯罪を目撃した証人の証言などの犯罪を直接証明する証拠があれば確実に真実を明らかにできるようにもみえるが、実は本当に信用できるかどうかの判断は簡単でない。DNA鑑定でえん罪であることが明らかになった事件を検討したアメリカのある研究によると、もっとも多かった誤判の原因は目撃証人が誤って無実の者を犯人と判断したことであり、虚偽の自白も少なくないからである。犯罪を直接証明する証拠がなければ、推測が必ず入ってくるので絶対確実ということはありえない。しかし、絶対確実であることを要求すれば、裁判はなりたたない。そこで「合理的疑いを超える」証明があれば、有罪判決してよいとされている。したがって、どのように努力してもえん罪はなくならない。もっとも、現実に発生しているえん罪は関係者に何らかの落ち度がある場合が多いだろう。わが国では、物的証拠を十分に検討せず、強引な取調べによって自白を獲得し、獲得した自白について十分な裏づけ捜査を行わず、安易に自白に頼ったことが誤判の原因であることが多いと推測される。(→「取調べの可視化」)