戸籍上の夫婦でない男女間に生まれた婚外子(非嫡出子(ひちゃくしゅつし))の相続分を、戸籍上の夫婦の子(嫡出子)の半分とすること。たとえば、非嫡出子と嫡出子をもつ父が600万円の財産を残して死亡したとき、おのおのの相続分は、200万円と400万円になる。封建的な家族制度を廃止し、新憲法に適合するように民法が改正されたのは1947年(昭和22)のことである。当時はまだ、相続財産を嫡出の子孫に承継させたいとする気風や、非嫡出子に対する差別的な国民の意識が残っていた。そのため、非嫡出子に相続分を認めつつ、その割合を半分にする折衷的な仕組みがとられた。しかし、婚外子は昭和50年代後半ごろから増加し始めた。また未成年の子をもつ夫婦の離婚件数と再婚件数も増加しており、婚外子に対する国民の意識や家族観も多様化している。もはや、戸籍上の子か婚外子かという違いによって相続分を別扱いする合理性は乏しい。他方で、子の立場から見れば、父母が戸籍上の夫婦でなかったことは、婚外子が自分で決めたことではなく、努力して嫡出子になることもできないから、相続分の差別は子を個人として尊重する点からも適切ではない。最高裁判所大法廷は、以上に加えて、諸外国の立法の状況や日本が批准した条約の内容、嫡出子と嫡出でない子の区別に関わる法制等の変化などを総合的に判断し、非嫡出子の相続分差別を、法の下の平等を定めた憲法14条1項に違反するものとして無効とする判断を示した(2013年9月4日最高裁判所大法廷決定)。これを受けて国会は、婚外子と嫡出子の相続分は原則として同等とする内容に民法を改正した(同年12月5日)。