取り調べの可視化、司法取引の導入、通信傍受の対象犯罪の拡大などを柱とする刑事訴訟法等の一部を改正する法律。2016年5月に成立、3年以内に施行される。取り調べの可視化とは、逮捕・勾留中の被疑者取り調べの全過程を録音録画することである。ただ対象になるのは、裁判員裁判対象事件(→裁判員制度)や検察の独自捜査事件(全体の3%)に限る。また、取調官の判断で可視化に例外を認めるなど問題が多い。司法取引は、第1に、被疑者・被告人が共犯者等他人の犯罪を明かせば、不起訴または求刑を軽減する内容、第2に、罪に問わない条件で罪を認める証言をさせる内容の2種が導入される。ただ、自己保身で他人を巻きこめば冤罪の温床となる。通信傍受は、従来、薬物・銃器・集団密航・組織的殺人について、通信会社社員の常時立ち会いのもとで認められたが、新法では重大とはいえず、かつ件数が多い傷害・窃盗・詐欺などが新たに加えられ、常時立ち会いも不要とされた。本法は当初、極端な取り調べ・供述調書の偏重の防止を目的としていたが、不完全な可視化と捜査権限の拡大に終わったことに問題が残る。