インターネットを用いた、あるいはネット上で展開される政治活動。アメリカ大統領選挙では、候補者にとってインターネットは必須の手段になっている。費用が安いのに加えて、多くの有権者が動画投稿サイト「ユーチューブ」をはじめネットを通じて候補者の情報を収集するようになったからだ。日本ではネットを使った選挙運動は、公職選挙法上はまだ解禁されていないが、2007年の参議院選挙では、公示前の段階でネットを活用する動きが高まり、公示後も、各党はホームページで党首などの第一声、演説などの紹介や機関紙の転載などを行い、更新を続けた。とくにブログは政治家にとって自分の信念や政策、活動を国民に直結させる重要な手段となりつつある。各政党および政治家にとって「ユーチューブ」、「ニコニコ動画」、「ユーストリーム」を用いての情報発信は、その主張と活動を国民に知らせるうえで不可欠の活動となった。また多くの地方自治体も独自のチャンネルを開設している。鳩山由紀夫首相(当時)は10年1月に公式ブログ「鳩cafe(カフェ)」を開設した。さらに140字以内で短い“つぶやき”を書き込めるミニブログ「ツイッター」は、オバマ大統領が使っているとの報道があったこともあり、日本の政治家にとっても重要な武器として位置づけられるようになった。ネットで国民と直接対話することで政治に「ふれあい」感覚を生み出すことが狙いである。しかしネットによる「ふれあい」感覚の醸成は、政治家の本務である政策の主張をないがしろにして、国民と情緒的になれあう政治を生み出す危険性がある。小沢一郎元民主党代表は10年9月の党代表選で敗北して以降、ネット・メディアに度々出演するなど、自分の発言を編集されないで国民に伝えることができる回路を探して、情報発信に努めている。菅直人首相も内閣支持率が低迷する根底には国民への発信力が弱体であるとの反省から、自身のブログ「KAN-FULL BLOG」を開設し、2カ月間で10本の動画を流したり、11年1月7日夜にはニュース専門インターネット放送局「ビデオニュース・ドットコム」の生放送に現役首相として初出演する(「ニコニコ動画」でも流された)など、既存メディアを抜きにして国民への直接発信を試みている。しかしこうしたネット・メディアの利用は、一方的に主張するという発信方式に依存しがちであり、果たして国民への直接的な発信の名に値するのか疑問も上がっている。