2008年のアメリカ大統領選挙でバラク・オバマ候補が勝利した理由の一つに、インターネットや携帯電話を選挙運動の中心にすえたことがあげられる。いままでの選挙運動に軸足を置き続けたヒラリー・クリントン候補を破って民主党指名争いを制し、さらに本選では共和党のジョン・マケイン候補に勝った大きな要因の一つは、インターネットと携帯電話による「バラクがあなたに直接」訴える手法にあった。選挙資金集めでは、オバマ陣営はインターネットによる個人献金を積極的に活用して、劣勢という事前予想を覆して小口献金をクレジットカードで広い支持層から集めて巨額の資金を獲得し、資金面でもヒラリー候補を圧倒した。また携帯電話のメールでボランティアのネットワークを組織化して、有権者登録や集会への動員を呼びかけ、オバマ支持者の大量動員に成功した。こうした支持基盤作りによって得られた巨額の資金を集会での演説やテレビCMに投入し、それがまたネットを通じて支持者に浸透し、さらに支持層を広げるというサイクルを作り上げた。また動画投稿サイトの「ユーチューブ」を積極的に活用した点も見逃せない。就任後には、大統領が毎週末にラジオで行う国民向けの演説を同時にビデオ収録して、記者会見の映像などとともに、「ユーチューブ」で公開している。また専用のインターネットサイト「CHANGE.GOV」を立ち上げた。インターネットはオバマ政権を支える主要なコミュニケーション・チャネルとなっている。ホワイトハウスのフェースブック公式ページは、ネットで政策を市民に問う試みであり、「開かれた政権」という公約の実現を目指している。また大統領選挙期間中からオバマ大統領が高機能携帯端末「ブラックベリー」を愛好していることが話題になっており、これに大統領の名前のバラクをひっかけて「バラクベリー」という言葉が生まれた。