ネット社会が生み出した矛盾に対抗することを目的に考え出された権利で、ネット上で管理されている個人情報は、本人が希望すれば消去できる権利(消去権)をさらに進めて、より積極的に権利の性格を位置づけたもの。インターネット上では個人の知らないうちに、また予想外の広がりで、膨大な個人情報が収集されており、それがいつ、どのように利用されるかについては、個人の処理能力をはるかに超えている。個人が管理し、処理できないネットでの情報流通が生み出すプライバシー侵害から個人情報を守るために、EU(欧州連合)は2012年1月、個人情報保護を強化する法案の中で、「忘れられる権利」を提唱した。情報はネット上で一気に拡散し、一度拡散してしまうと、サイト管理者やネットを使ってサービスする企業に要求しても、その消去は容易ではない。こうして個人が希望すれば消去できるという権利の状態をさらに進めたのが「忘れられる権利」である。しかし個人の要求によってデータを消去することができる権利と、従来の「知る権利」や「表現の自由」などの権利を、どう両立させるかという難問を解決しなければならない。