耐熱性、耐磨耗性に優れ、建材や水道管、自動車ブレーキ材などに広く使われた天然の繊維状鉱物。生産工程や建物の解体時などに粉じんとして飛散し、肺に入り込むと、肺を包む胸膜の表面層である中皮に腫瘍ができるとされる。1972年にWHO(世界保健機関)が発がん性を指摘。80年に発がん物質に断定されてからは、90年代までにヨーロッパ各国が全面禁止に動いた。日本は、旧環境庁による不十分な調査を根拠にアスベストの法的な排出規制を見送った結果、WHOの安全基準と同水準に規制されたのは89年と、対策が後手にまわった。70年代以降、輸入されたアスベストは約1000万tとみられ、今後は建物解体時に飛散する恐れがある。