国が発注したトンネル工事に従事して、じん肺になった患者と遺族約960人が国に計32億円の損害賠償を求めた訴訟。2007年6月の東京高裁での和解成立後、係争中の裁判も順次和解に至り、終結した。じん肺は、大量の粉じんを吸い込んで肺の機能が低下する病気。工事を受注したゼネコンを相手取った訴訟では、03年5月までに患者約1470人に各200万~900万円を支払うことで和解が成立している。一方、「じん肺根絶には国の責任を問うことが不可欠」とする患者らは02年11月の東京地裁を最初に、全国11地裁で国に対する賠償訴訟を起こした。06年7月、東京地裁は被害防止の対策をとらなかった国の不作為の責任を認め、原告44人に計6930万円の支払いを命じた。以後、熊本、仙台、徳島、松山地裁で原告勝訴の判決が出たことから、国は不作為責任を認めないものの、和解の方針へ転換。粉じん濃度測定の義務化など、じん肺防止対策を強化するとした。原告は損害賠償請求を放棄し、和解の成立となった。