2015年6月18日に発表されたローマ法王の環境と気候変動問題をテーマにした回勅。回勅とは法王による最も重要な文書の一つで、環境と気候変動問題をテーマとしたのは初めてである。回勅では、気候変動をはじめとする環境問題に関する最新の科学的研究を踏まえ、現在の生産・消費パターン、生活スタイルを「持続不可能」とし、それらの抜本的転換を訴えている。地球温暖化については、「今世紀にとてつもない気候変動と、生態系の未曽有の破壊が起き、深刻な結末を招きかねない」と警告したうえで、化石燃料の過剰使用を戒め、国際社会(とりわけ先進国)に迅速な行動を求めている。さらに、「富裕国の大量消費で引き起こされた温暖化のしわ寄せを、気温上昇や干ばつに苦しむアフリカなどの貧困地域が受けている」とし、人間的・社会的側面を明確に含む「統合的なエコロジー」を提唱した。われわれの家である地球が上げている叫びに耳を傾け、皆の共通の家を保全し、責任をもってその美しさを守るために「方向性を変えていく」よう「環境的回心」を呼びかけている。世界のキリスト教徒は20億人、そのうちカトリックの信徒は12億人であり、この回勅は大きなインパクトを与えた。法王は15年9月のニューヨークでの国連総会と、ワシントンでの合衆国議会合同会議で演説し、この回勅の趣旨を訴えた。回勅は15年11月30日からパリ郊外で開催されたCOP21(第21回気候変動枠組条約締約国会議)の議論にも大きな影響を与えた。