多くの国の出産力調査は理想子ども数と予定子ども数を尋ねている。夫婦にとっての理想子ども数とは「あなた方夫婦にとって、理想的な子どもの数は何人ですか」という設問に対する回答であり、予定子ども数は「あなた方ご夫婦の今後のお子さんについてお尋ねします」という設問に対し、今後産むつもりの子ども数に、すでにその夫婦がもっている子ども数を足したものである。一般に理想子ども数は予定子ども数よりも多く、また理想子ども数は人口置換え水準の出生数よりもかなり多いのが普通であるが、近年ヨーロッパには異変が起きている。「ヨーロッパ・バロメーター」というEU(欧州連合)の世論調査機関の1999/2000年調査によれば、全般的に理想子ども数は減少しているが、特に注目すべきはオーストリアとドイツの若い年齢階層(18~34歳)の女性の理想子ども数が、オーストリア1.72、ドイツ1.74と、人口維持のために必要な2.1の水準をかなり下回っていることである。長年にわたる超少子化社会のもとに、若い世代はそれが理想的状況だと思い込んでしまっているという解釈がある。日本の場合、理想子ども数、および予定子ども数は近年共に年々下降はしているものの、05年の国立社会保障・人口問題研究所「出産動向基本調査」によれば、理想2.48人、予定2.11人と共に人口置換え水準を上回っている。ただし、この数値は調査時に結婚している夫婦が対象であって、現在結婚していない男女を含んでいないことに留意する必要がある。