日本国内における人口移動は、1973年をピークとして以後減少し、総務省の住民基本台帳人口移動報告によれば、2010年の国内人口移動総数は508万4579人で、09年に比べ21万5446人減少した。都道府県間移動者数は233万2392人で、13万7187人減少している。男女の構成比率は、男53.3%、女46.7%で、男子が多いのは変わらない。最近の減少傾向の理由として、(1)経済情勢は好転せず、大都市圏や地方の大都市が周辺の労働力を吸引する力が弱くなっていること、(2)移動者の中核は15~34歳の青壮年人口であるが、少子高齢化が進行し、移動送り出し県における該当年齢層の人口が減ったこと、が挙げられる。10年では、転入超過県は首都圏に属する都県(茨城、埼玉、千葉、東京、神奈川)、地方大都市圏の一部の県(滋賀、福岡)、それに沖縄の8都県に限られていた。11年3月11日に発生した東日本大震災の関連情報として発表された、都道府県間人口移動の特別集計によればこの傾向が一変する。11年3~11月の期間に対する都道府県間人口移動転入超過の状況を、前年同期間の状況と比較すると、顕著な変化が認められる。震災以後における転入超過県は、埼玉、東京、神奈川、愛知、滋賀、京都、大阪、兵庫、岡山、福岡、沖縄の11都府県である。すなわち、これまで転入超過県であった首都圏の茨城、千葉が転出超過になり、逆にこれまで転出超過であった愛知、京都、大阪、兵庫、そして中国地方の岡山が転入超過になった。また、被災の激しかった宮城、福島はこれまでも転出超過であったが、今回、転出が大幅に増えているのは震災の直接的影響であろう。中でも福島は10年に転出超過の5512人が、11年に一挙に3万158人へと増加している。一方、千葉は10年に転入超過が1万3369人あったのが、11年に転出超過2216人に変化した。また埼玉、東京、神奈川は、11年も転入超過ではあったが、その数はかなり減っている。たとえば東京は10年3~11月に4万7151人であったが、11年には4万751人に減少している。