食品に放射線(ガンマ線や電子線、エックス線など)を照射して殺菌や殺虫を行うこと。放射線が当たっても熱の発生がなく、薬剤のように残留もないことから、利便性が高い。放射線照射処理が施された食品を、照射食品(irradiated foods)と呼ぶ。1980年、国際食糧農業機関(FAO)、国際原子力機関(IAEA)、世界保健機関(WHO)の合同専門家委員会が「総体平均線量が10kGy以下で照射された食品には健全性には問題はない」という結論を出し、これを受けて、1983年にコーデックス委員会は、照射食品の国際基準を定めた。海外では、冷凍食品や香辛料の殺菌に外国で利用されている。日本では、低線量での馬鈴薯の発芽防止のみが許可されており、北海道士幌のプラントで年間数千トンの処理が行われている。2000年12月に全日本スパイス協会が厚生労働省に対し、スパイスの照射殺菌の許可を求めたことからその是非が問われている。原子力政策を担っている原子力委員会は食品照射専門部会を設置し、06年10月に取りまとめを行い、07年にかけて公開シンポジウムを開催して、一般市民のコンセンサスを得る努力を行っている。ただ、日本ではベビーフードへの違法照射が行われたことがあり、その刑事裁判判決の中で、食品照射の安全は認められていないという司法判断がなされており、解決の足かせとなっている。