パンの材料として用いられる小麦粉は強力粉というたんぱく質含有量が高いものが使われる。パン独特の弾力をもたせるには、たんぱく質から生成するグルテンが欠かせないからである。強力粉は、硬質小麦からのみ得られるが、日本は気候の関係から硬質小麦の栽培ができない。そのためにパン用小麦はすべて外国からの輸入に頼っている(日本の小麦の自給率は15%程度)。こうした中、輸入小麦の残留農薬や遺伝子組み換えなどが問題化し、食の安全性や国内産に対する関心も高まり、たんぱく質含量が低い日本の小麦からパンを製造する技術が開発された。ポイントは、小麦粉改良剤の利用である。臭素酸カリウムは強力な小麦粉改良剤であり、たんぱく質が不足していてもグルテンを作ることができる。このことは従来から知られていたが、臭素酸カリウムの残留が問題となっていた。新技術は、この臭素酸カリウムが製品に残留しない技術を開発したものである。日本の食料自給率の向上につながるものと期待されている。