現行の裁判制度には、「解決までに時間がかかる」「費用が高い」「手続きの進め方が難しい」「経過や結果が公開されてしまう」などの問題点を抱え、なかなか利用しにくい面がある。そこで、以前からあった裁判所の民事調停や交通事故紛争処理センターなど、当事者の合意に基づく解決を手助けしてくれる機関(ADR機関)の機能が注目され、2004年に「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律」(ADR法)が制定された。施行は07年4月。ADRの手続きは、当事者の一方から申し立てを受け、相手に手続きに応じるかを確認し、応じた場合のみ第三者を選任する。ADR機関には、強制力のない(1)あっせん(当事者同士の話し合いを円滑に進むよう努める)、(2)調停(調停案の提示を行う)と、強制力を持つ(3)仲裁(仲裁合意を行うと、その紛争については裁判が受けられない)の3類型があり、いずれも非公開で行われる。消費者紛争については、(独)国民生活センターが09年4月よりADR機能を持ち(→「国民生活センター紛争解決委員会」)、各地方公共団体(都道府県、政令指定都市)には、条例により、苦情処理委員会や消費者被害救済委員会が設置されている。