正式には「不当景品類及び不当表示防止法」という。1962年に公布された法律で、その制定のきっかけとなったのは公布の2年前に東京で起きた「ニセ牛缶事件」である。消費者から牛肉の缶詰の中にハエが入っていたので調べてほしいと保健所に申し出があり、調べたところ、「牛肉大和煮」のはずが牛肉はまったく入っておらず、すべて馬肉であることが判明した。念のため、市販の他の牛肉缶詰を調べたところ、牛肉と表示されて販売されていた20数個の缶詰のうち、実際に牛肉が入っていたのは1割程度で、あとは価格の安い馬肉や鯨肉(当時は廉価だった)などだった。しかし、「食品衛生法」は腐敗・変敗などの安全面を取り締まる法律であり、馬肉や鯨肉が衛生面で問題がなければ法的には問題にできない。当時、たとえニセ牛缶であってもどの法律にも抵触せず、消費者は表示と中身が違っていても法的には問題にできなかった。この事件をきっかけに、公正取引委員会は、消費者が正しい表示によって商品選択ができるよう「景品表示法」を制定した。制定から半世紀後の2013年、全国の有名ホテル等でシバエビや和牛などの高級食材が、実は廉価の食材であったという「偽装メニュー表示事件」(→「メニュー表示偽装」)が発覚し、またもや消費者は優良誤認による経済的な損害を被った。商品の表示というのは、消費者にとって商品選択の際の貴重な情報源であり、正しい情報が適正に書かれているという前提のもとに商品を購入している。特に、食品については安全・安心の観点から、表示は揺るがせにできない問題である。これまで、このような偽装表示事件を起こした事業者に対する経済的な制裁措置の規定がなかったが、14年12月に施行の改正景品表示法により、不当な表示を行った事業者に対して、対象商品の売上額の3%の課徴金を課すことができるようになった。