消費者契約関連のトラブルが多数発生する原因は、消費者と事業者との間に情報の量及び質に格差があり、さらに交渉力においても格差が生じていることにある。こうした理由から、消費者の利益を守ることを目的に、2000年4月、消費者契約法が制定、翌01年4月に施行された。全国の消費生活センター745カ所(14年2月現在)に寄せられる消費生活相談は、12年度で年間約90万件のうち約7割が消費者契約関連のトラブルで占められている。消費者契約法で規定する消費者契約とは、消費者と事業者との間で締結される契約のすべてが対象であり、適用の範囲がかなり広い。悪質商法については、1976年に公布された「訪問販売等に関する法律」(現在は、「特定商取引に関する法律」(→「改正特定商取引法/改正割賦販売法」)に改称)により規制されてきたが、規制を逃れるための悪質な商法が次々と登場し、消費者トラブルはむしろ増加する傾向にあった。訪問販売等に関する法律は、制定当時、「訪問販売」「通信販売」「連鎖販売取引(マルチ商法)」の3類型を規制対象としたが、その後、「電話勧誘販売」「特定継続的役務提供」「業務提供誘引販売取引」「訪問購入」が規制対象として加わり、現在は7類型が規制されている。しかし、これ以外の一般的な消費者契約でのトラブルも多く、これを減少させるには消費者契約全般を対象とした法規制が必要との声が高まり、民事ルールとして消費者契約法が制定された。内容は、(1)消費者契約の取り消し、(2)消費者契約の条項の無効、(3)差止請求の三つの事項について規定されている。一般消費者にとって、最も関連があるのは、(1)消費者契約の取り消しについてであり、(2)消費者契約の条項の無効は、法律の専門家向けの内容であり、(3)差止請求は、消費者団体向けの内容となっている。(1)消費者契約の取り消しが可能となるのは、不実の告知(うそ)を告げられて契約した場合などの3類型と、消費者を威迫・困惑させての契約の場合(2類型)についてであり、こうした場合、同法に基づき、事業者に契約の取り消しを求めることができる。消費者契約法は、消費者契約を幅広く対象とした民事ルールという性格上、特定分野を対象とする罰則等を含んだ特定商取引に関する法律などに比べ、悪質商法等の事業者の不適切な行為の防止にはある程度、限界があることが制定当時から指摘されていた。実際、消費生活センターで消費者契約法に則ってトラブルの解決が図られたというケースは、期待されていたほど多くないといわれている。