消費税の仕入税額控除は税の累積を防止するための制度であるが、仕入れを証明する証拠の存在が前提になる。日本では帳簿・請求書保存方式によっている。帳簿・請求書保存方式とは、仕入れ取引に関する「帳簿及び請求書等」を保存させること。これに対して、EU諸国の付加価値税はインボイス方式によっている。インボイスとは、付加価値税における証拠書類を兼ねた請求書や領収書などのことで、付加価値税のためだけに発行されるものではない。この点では、日本の請求書や領収書などと変わらない。違いは、免税事業者は付加価値税に関する税率、税額など(国によって異なる)を記載できないこと、つまり、免税事業者は付加価値税(消費税)の情報を記載したインボイスを発行することはできない。したがって、課税事業者と免税事業者がはっきり区別できる。2016年度の税制改正で、17年4月1日からの消費税率(地方消費税率を含む)の10%へのアップに際して軽減税率を導入することが決定された。ただし、19年10月1日まで延期される(→「消費税の軽減税率」)。改正後は8%と10%の複数税率になるので、両者を混同しないために適格請求書等保存方式(インボイス方式)に変更する。21年4月1日から導入する。この改正により軽減税率の対象物品と対象外の物品を販売している事業者は、これらを誤りなく請求書に記載しなければならない。また、課税事業者であれば軽減税率が適用されない事業者も適格請求書(インボイス)を発行しなければならない。適格請求書とは、適格請求書発行事業者の登録番号、適用税率、消費税額等の一定の事項が記載された請求書、納品書等をいう。適格請求書発行事業者とは、免税事業者以外の事業者で税務署長に申請書を提出し、適格請求書を交付することのできる事業者として登録を受けた事業者をいう。適格請求書発行事業者は、一部の例外を除いて適格請求書を交付しなければならない。このように適格請求書等保存方式は、これまでにない事務負担を伴うので、19年10月1日から23年9月30日までの取引には、現行の帳簿・請求書保存方式による。ただし、軽減税率対象品目については、請求書に「軽減対象課税資産の譲渡等である旨」及び「税率の異なるごとに合計した対価の額」を加える。また、売り上げまたは仕入れを税率の異なるごとに区分することが困難な事業者に対しては、売上税額または仕入税額を簡便に計算することを認める特例を設ける。適格請求書等保存方式に変更すると、これまで指摘されていた免税事業者が取引から排除される問題に向き合わなければならない。