実際に支出した金額(特定支出)を、サラリーマンの必要経費とする制度のこと。特定支出とは、サラリーマン自らが支出する通勤費、転勤費、研修費、資格取得費、単身赴任帰宅費をいう。ただし、資格取得費の範囲は限定されており、また交際費のような支出は認めていなかった。そこで、2012年度の税制改正で、これまで資格取得費から除外していた職務の遂行に直接必要な弁護士、公認会計士、税理士、弁理士などの資格取得費と、勤務必要経費を追加した。「勤務必要経費」とは、職務と関連のある図書の購入費、職場で着用する衣服の衣服費、職務に通常必要な交際費、職業上の団体の経費のこと。この場合、その年中に支出した勤務必要経費の合計額が65万円を超える場合には、65万円を限度とする。ただし、給与等の支払者により補てんされる部分があり、かつ、その補てんされる部分に所得税が課されない場合は補てんされる部分は除く。
16年度の税制改正では、特定支出から除外するものに、教育訓練給付金(雇用保険法)、母子家庭自立支援教育訓練給付金(母子及び父子並びに寡婦福祉法)、父子家庭自立支援教育訓練給付金(同法)が支給される部分が追加された。さらに、特定支出控除の計算方法を見直した。具体的には、その年の特定支出の額の合計額が、(1)その年中の給与等の収入金額が1000万円(17年分以降)以下の場合はその年中の給与所得控除額の2分の1を、(2)その年中の給与等の収入金額が1000万円(17年分以降)を超える場合は110万円(17年分以降)を超える部分の金額を給与所得控除額に加算することができる。
14年度の税制改正で給与所得控除額の上限が順次、引き下げられることに伴い、17年度より上記の(1)、(2)は、特定支出の額の合計額が給与所得控除額の2分の1を超えるときは、その超える部分の金額を給与所得控除額に加算する規定に改めた。
18年度の税制改正では、特定支出の範囲に、勤務する場所を離れて職務を遂行するために直接必要な旅行である場合において、給与等の支払者により証明された通常要する支出を加える。単身赴任帰宅費については、1月に4往復以内でなければならないという制限を撤廃するとともに、帰宅のために通常要する自動車を使用することにより支出する燃料費および有料道路の料金の額を加えることができるようになった。(→「給与所得控除」)