国が低所得者に行う支援は、所得控除から税額控除、税額控除から手当の給付というのが近年の考え方。消費税率を8%から10%にアップすると、基礎食料品についての低所得者の消費税の税負担が相対的に増加する。これが逆進性の問題。この問題に対処する手法の一つが給付付税額控除。実際の導入例としては、アメリカの勤労所得税額控除や子女税額控除がある。いずれも所得税額から一定額を控除し、控除しきれない金額は給付する。制度設計に際しての問題は、予算の関係で所得の低い人や所得のない人の全員に給付することはできないこと。そこで、勤労所得税額控除は、就労インセンティブを付けた制度にしている。所得の低い人の所得税額が勤労所得税額控除額を下回る場合に、その下回った金額を給付する。翌年、所得が増加した場合も一定の所得金額までは勤労所得税額控除額も増加する仕組みにしている。つまり、一定の所得金額まで所得が増加しても所得税は増加しないという、勤労意欲をなくさせないようなシステムを組み込んでいる。しかし、働く気持ちのない人には給付する必要はないが、働きたくても就職できない失業者は所得はゼロなので給付できないという問題点がある。つまり、働く意欲のある人とない人の違いを第三者は判断できないので、前者を抽出して給付することはできない。つまり、消費税の逆進性対策には、一定の効果はあるが完全ではない。さらに、アメリカでは、不正受給が問題になっている。収入金額を実際よりも少なく申告して本来の規定以上に給付を受ける例や、子女税額控除については、子どもの同居要件を満たしていないのに、偽って給付を受ける例などが報告されている。民主党政権では、消費税の逆進性対策として給付付税額控除を考えていたが、自由民主党と公明党の連立政権は、軽減税率によることにした(→「消費税の軽減税率」)。