例えば個人の日常生活では、テレビが故障して買い替えることは普通に起こる。テレビを廃棄すると損失が生じる。これらの損失は誰でも日常的に生ずるので、原則として所得税の減額対象にしない。例外として災害、盗難、横領による損失に限り雑損控除(→「雑損控除/雑損失の繰越控除」)の対象とする。ただし、これにもさらに例外があり、生活に通常必要のない資産は対象外とする。「生活に通常必要のない資産」とは、(1)競走馬(事業的規模で所有するものを除く)その他射こう的行為の手段となる動産、(2)別荘、(3)1個または1組の時価が30万円を超える宝石、貴金属、書画、こっとう、美術工芸品などをいう。生活に通常必要のない資産の損失についても、災害、盗難、横領により生じた場合に限り、損失を受けた日の属する年かその翌年分の譲渡所得の計算での控除は認められている。次に生活に通常必要のない資産を譲渡した場合を考える。例えば(3)の宝石を譲渡し、譲渡益(譲渡収入から譲渡原価と譲渡費用を控除した金額がプラスの場合)が生じた場合は、譲渡所得の課税の対象になる。これに対し、譲渡損(譲渡収入から譲渡原価と譲渡費用を控除した金額がマイナスの場合)が生じた場合は、同じ年に他の資産の譲渡について譲渡益があれば、これらの譲渡所得内で相殺することができる。生活に通常必要のない資産についての譲渡損だけの場合は、その譲渡損が(1)の競走馬の譲渡に係るものである場合に限り損益通算が認められる。その対象となる所得は、競走馬の保有に係る雑所得である。それ以外の生活に通常必要のない資産についての譲渡損は、給与所得など他の所得との損益通算は認められない。2014年度の税制改正で、生活に通常必要のない資産の範囲に、主として趣味、娯楽、保養または鑑賞の目的で所有する不動産以外の資産を加えることにした。これには、ゴルフ会員権やこれに類する会員権が含まれる。この改正により、ゴルフ会員権の譲渡損は、他の資産を譲渡することにより生ずる譲渡益との相殺は認められるが、従来認められていた給与所得との相殺は認められなくなった。14年4月1日以後に行う譲渡から適用される。