日本国内の法人から受ける配当などの全部または一部を益金に加えないとする制度。法人が支払う配当は収益を獲得するための支出ではなく、利益を株主に分配するものなので、法人の費用にはならない(損金不算入)。一方、株主が個人の場合は、配当所得として所得税が課税される。ここで、法人と個人株主の間の密接度が問題になる。両者が密接な関係にあるような、たとえば、社長一族が全額を出資している場合は、個人株主との一体性は非常に強い。この場合は法人税が課税された後の所得を配当として受け取るので、同じ所得(配当)に法人税と所得税が課税されていると考えることができる(二重課税)。この点を調整するのが配当控除。個人の所得税の計算で税額控除する。ただし、実際の配当控除は、法人と個人の密接度に関係なく、配当を受け取ったすべての個人に適用される。一方、株主には法人もなることができ、受け取った配当を課税すべきか否かが問題になる。ここでも法人と法人の密接度が問題になる。たとえば、親法人と親法人が100%出資している子法人の関係は、子法人は親法人の分身と考えることができる。この場合は、親法人が受け取る配当金は、元々親法人のものであって所得でないと考えることができる(益金不算入)。一方、たとえば、上場会社に1000株投資し、配当金を受け取った場合は、資金の運用先として上場会社の株式を選んだだけであると考えることができる。この場合の配当金は、預金利息の収入と変わらないので、理論的には調整しない(課税)と考えるべきものである。「受取配当等の益金不算入制度」は、基本的には法人が受け取った配当について調整する(益金不算入)ことにしている。2015年度の税制改正では、この調整の仕方を課税強化する方向で見直した。その理由は、安倍内閣は法人税率を引き下げることとしており、引き下げを実施すると減収になるので、それを補うためである。改正後の受取配当等の益金不算入の制度は、次のとおりになる。
(1)完全子法人株式等(株式等保有割合100%)…益金不算入割合は100%
(2)関連法人株式等(株式等保有割合3分の1超)…益金不算入割合は100%
(3)非支配目的株式等(株式等保有割合5%以下)…益金不算入割合は20%
(4)その他の株式等((1)~(3)以外)…益金不算入割合は50%
なお、改正前は、公社債投資信託以外の証券投資信託の収益の分配についても受取配当等の益金不算入の対象にしていたが、改正後は全額を課税の対象とする(益金算入)。特定株式投資信託の収益の分配は、非支配目的株式等と同様に20%を益金不算入とする。(→「外国子会社から受ける配当等の益金不算入制度」)