少子高齢社会が進行する中で、働き手として女性に対する期待が大きくなっている。中でも既婚女性への期待が大きいが、三つのタイプが考えられる。最初はフルタイムで働く妻で結婚しているが子どもがいない人が多い。次は子育てをしながらパートで働く妻。最後は、夫の収入に依存し、自らは働いていない専業主婦。所得税では無収入または年収が103万円以下の妻については夫が妻を扶養していると考えて配偶者控除を認めてきた。しかし、より多くの女性に働いてもらうために税制を活用するという視点からは、減税のための限られた財源をフルタイムで働く妻のために使うのがいいのではないかという意見が強くなった。これが夫婦控除。夫婦の年収を合わせた中で配偶者控除に相当する金額の所得控除を認めようというもの。しかし、(1)現行の制度では、国が夫婦の年収を把握する手段を持っていないこと、(2)高額収入を得ている夫と無収入の妻のカップルを引き続き優遇すること、(3)共働き夫婦といっても正式の婚姻関係のある夫婦に限ること、(4)独身女性に結婚を奨励することになること、などの理由により夫婦控除の導入が見送られた。
2017年度の税制改正で、これまで認めていた配偶者控除と配偶者特別控除を見直した。ただし、改正前と改正後はこれら二つの控除による減税額を変えない税収中立の考え方に基づいている。具体的には、妻の年収を改正前の103万円以下を150万円以下にアップした。改正前は配偶者控除で規定していたが、改正後は妻の年収が103万円を超えて150万円以下の部分は配偶者特別控除で対応する。ただし、改正前の38万円の控除が受けられるのは、夫の年収が1120万円以下の人。1120万円を超えて1170万円以下の人の控除額は26万円、1170万円を超えて1220万円以下の人は13万円になる。年収が1220万円を超えると、配偶者控除も配偶者特別控除も受けることはできない。配偶者特別控除は、妻の年収が103万円を超えると配偶者控除を受けることはできないことから、激変緩和のために配偶者控除に代えて段階的に控除額を減らして行く特例のこと。配偶者特別控除も配偶者控除と同様に、夫の年収により三つのタイプに区分して控除額を定めている。夫の年収が1120万円以下の場合は、妻の年収が103万円を超え150万円以下の人は38万円、150万円を超え155万円以下の人は36万円などと9段階に分けで控除額を減額して行き、年収が201万6000円を超えると配偶者特別控除はゼロになる。住民税についても同様の改正を行った。
2018年度の税制改正では、給与所得控除額を10万円引き下げるとともに、控除額が増加する給与収入の上限を850万円まで引き下げることにしているので、上記の説明のうち1120万円は1095万円に、1170万円は1145万円に、1220万円は1195万円に、103万円は93万円に、150万円は140万円に、155万円は145万円に、201万6000円は187万2000円に変わるが、控除する仕組みと控除額は変わらない。(→「給与所得控除」)