東日本大震災を契機に、各地での電力不足が深刻な問題となっている。2011年の夏には、大規模停電を未然に防止することを目的に、関東地方で計画的に地域を区切って停電する計画停電が実施された。また、各電力会社は、消費者に対して節電を要請するようになり、生活や産業への影響が懸念され始めている。大規模都市においては、都市機能の維持やそこにおける人々の生活の維持のために、十分な電力の安定的供給がその前提とされている。したがって、電力の供給が制限されれば都市機能全般に支障を来す可能性がある。例えば、高層のマンションやオフィスビルなどでは、エレベーターが移動の前提となっており、特に高齢者や乳幼児などは、エレベーターが使用できない場合、緊急的な避難すら難しくなる。また、水道や鉄道などの都市インフラの維持管理や、医療機関や各種のコンピューターネットワークの維持においても多くの電力が使用されており、電力供給の減少や不安定さは、生活の安心安全にかかわる様々な問題を引き起こす。さらに、将来、電力をエネルギー源とする電気自動車などの利用が増大すると、都市における電力消費量は一気に増加することが見込まれる。太陽光発電や風力発電などによる新たな電力供給の展望はあるが限界もある。それらの推進とともに、スマートグリッドシステムの導入やコンパクトシティーへの転換などを含めた抜本的な都市構造の見直しなども視野に入れながら、電力消費の少ない効率的な都市のあり方について議論を進める必要がある。