都市に住む住民が農山漁村に移住する現象のこと。特に、近年、若者や女性の田園回帰の傾向が強まっていると言われ、2014年の「消滅可能性都市」、いわゆる「増田レポート」へのアンチテーゼとして注目を集めた。『平成26年度食糧・農業・農村白書(15年5月公表)』や『国土形成計画(全国計画)(15年8月公表)』などにおいても、田園回帰の動きを地域づくりに活かす必要性が盛り込まれている。一方で、そもそも移住者を定義することが難しいことや、住民票を移さないで移住している場合もあるなど、既存の統計調査では移住者の実態を把握することは困難である。上記の白書や計画などでも、移住者の動向そのものは把握されておらず、世論調査による都市住民の意向や移住相談者数の推移から、田園回帰志向の高まりが間接的に論じられているのが現状である。また、非常に幅広い概念を含んでおり、都市から地方への移住という単純な人口移動だけでなく、そこに含まれるUJIターンの動向、若者のライフスタイルの変化や田舎志向、都市と農村の交流、移住者と地域住民の協働による持続可能な地域づくりの可能性などをも含むものとされている。田園回帰には、仕事、住まい、コミュニティの三つのハードルが存在すると言われている。特に仕事は、若者や女性の移住者が増える中で、農林業だけではなく起業や継業など、多様化してきている。その際、移住者の生活の糧として単に収入を得るためだけでなく、イメージするライフスタイルを具体化するための仕事という側面も満たしながら、移住者が新しい担い手として農山村の地域資源を活用することで、新たな地域の価値創造に結びつくことが期待されている。