2005年8月29日にアメリカのニューオーリンズ付近に上陸したカテゴリー5(ハリケーンの大きさを示すシンプソンスケールの最高値)のハリケーン。高潮はん濫を主因として、ルイジアナ、ミシシッピ両州を中心に、1836人の犠牲者を出した。最近のアメリカのハリケーン災害は、人的被害が10人単位にまで減少していたが、80年ぶりに1000人を超える犠牲者が出た。その3週間後に同じくカテゴリー5のハリケーン「リタ」がテキサス州に上陸し、二つのハリケーンによって複合災害が起きた。人口約50万人中、その85%が前日の避難命令に従って市外に避難したニューオーリンズでも、800人以上死亡した。高潮の水位上昇に伴って、軟弱地盤上の堤防の基礎部の盛土の横移動や堤防越流による流水の落下によって掘られた穴が拡大し、運河や湖のコンクリート製の堤防が決壊したことが最大の原因。これによって、9億5000万トンのはん濫水で同市の市街地の約80%が水没した。また、未曽有の被害は、最悪のシナリオを考慮しなかったこと、危機対応におけるルイジアナ州と連邦危機管理庁やニューオーリンズ市当局との連携不足が主因。被災地の復興は難渋しており、一度人口20万人に減少したニューオーリンズではいまだに人口が被災前まで回復していない。