津波観測洋上ブイ、衛星、地上受送信施設からなる津波警報システムである。津波による、特に人的被害軽減のためには、迅速な避難がもっとも効果的である。そのためには地震発生直後に津波の来襲をいち早く感知し、警報を発令する体制が確立されなければならない。1960年のチリ地震津波は日本を始め、太平洋沿岸諸国に大きな爪跡を残した。その最大の理由は不意打ち災害だったことである。そこで、環太平洋地震帯で起こる津波を対象として、ユネスコ(UNESCO 国連教育科学文化機関)の下に、沿岸25カ国が毎年資金提供することを内容として、既設のアメリカ海洋大気庁(NOAA)の太平洋津波警報センター(PTWC)に業務委託する協定が65年に締結され、運用されてきた。2004年12月のインド洋大津波ではこのシステムがなかったことが大災害の原因と考えられ、ユネスコの下にインド洋でもこれを設置するための会議が開催されてきた。その結果、06年にはインド洋沿岸各地域を対象とした新しい津波警報システムが導入された。沿岸各地に設置された30台の地震計と3台の深海津波センサーからなり、これらからの情報を各国が独自に解析するシステムである。現在、ユネスコが主導する「インド洋津波警報システム(IOTWS)」が11年10月12日に本格的に運用を開始し、インドネシア、オーストラリア、インドが地域津波情報提供国となっている。このシステムには、20カ国以上が参加し、12年末に確立することになっていた。ただし、現状では観測された地域津波情報の精度や伝達などに関する種々の問題があり、当初予定していた20カ国以上の国が参加した統合システムとはなっていない。