自治体などから避難勧告や避難指示(命令に相当する)が発令されたときに、対象地域住民のうち、避難所に避難した住民の割合。2000年の東海豪雨災害に際しては、愛知県では各市区町村から合計約65万人の住民に避難勧告が発令されたが、実際に避難した住民は約6万人に過ぎず、避難率は9%であった。このように日本では、各種自然災害に対する避難率が10%程度となっている。最近でも、06年11月と07年1月に北海道千島沖で発生した地震による津波警報下での避難指示あるいは勧告では、前者で13.6%、後者で8.7%の住民しか避難しなかった。10年2月のチリ沖地震津波では、避難勧告・指示が約168万人に発令されたにもかかわらず、3.8%の6.4万人が避難したに過ぎなかった。このような低い避難率の原因は複数あげられる。(1)大雨、洪水、津波、高潮などの予報精度が必ずしも高くないこと、(2)避難情報を発令する市区町村長の判断レベルが一定ではないこと、(3)災害未経験住民が避難情報を軽視すること、(4)高齢者が避難のタイミングを失いやすいこと、などである。このような津波時の低避難率は、11年の東日本大震災における未曽有の人的被害につながった。この震災では国土交通省や内閣府の調査から、いずれも約40%近い住民が直後に避難しなかったことがわかっている。特に、一度帰宅した人が31%に達しており、「津波てんでんこ(津波のときはたとえ家族でもてんでんばらばらに各自の判断で逃げろという教訓)」の必要性が改めて強調された。