2016年4月14日21時26分、熊本地方を震央とする、震源の深さ11キロ、マグニチュード6.5の地震(前震)が発生し、熊本県上益城郡益城町(ましきまち)で震度7を観測した。その28時間後の4月16日1時25分には、同じく熊本地方を震央とする、震源の深さ12キロ、マグニチュード7.3の地震(本震)が発生し、熊本県阿蘇郡西原村と益城町で震度7を観測した。これらの地震は、布田川・日奈久(ふたがわ・ひなぐ)断層帯が起こしたもので、その後、震度1以上の余震が、12月31日までに4200回以上発生した。この震災による被害は、死者(関連死を含む)161人、負傷者2692人(ともに12月14日時点)、避難者数18万3882人、避難所数855カ所(ともに4月17日時点)、被害総額約4兆6000億円に達し、激甚災害に指定された。この震災で政府は初めてプッシュ型支援を行い、たとえば佐賀県鳥栖市に開設した物流拠点に約262万食を届けたが、そこから各避難所までは交通渋滞に阻まれ、計画通りの支援を行うことはできなかった。また、震度7を2回経験した益城町では、住宅被害は新しい戸建て住宅にも発生しており、日本建築学会などによる悉皆調査の結果、新耐震設計法の適用下(1981年6月~2000年5月)で木造877棟中、倒壊・崩壊・大破161棟(18.4%)、建築基準法の改正後の耐震基準適用化(2000年6月以降)で317棟中、同19棟(6%)の被害となった(17年9月6日時点)。これらは、設計上の配慮不足や耐震要素の不適切な設計・施工が原因とされた。この震災後、政府は中央防災会議に「熊本地震を踏まえた応急対策・生活支援策検討ワーキンググループ」を設置し、プッシュ型支援など、今回の対応の妥当性について初めて検証(ふりかえり)を行った。将来の南海トラフ巨大地震発生時に有効であると考え、改善することになっている。