新しい作用機序で、睡眠を誘導する睡眠薬。商品名は「ベルソラム」。これまでの睡眠薬にはバルビツール酸系、ベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系があり、その作用機序はGABAA受容体を活性化させ脳内の興奮伝達を抑えることによって睡眠が起こる、というものであった。対して本剤は、オレキシンという脳内に存在するペプチドに対する拮抗薬である。オレキシンは覚醒維持に働き、欠損するとナルコレプシーという過眠症を発症させる。そこで、オレキシンの受容体を遮断して覚醒シグナルを弱め、睡眠を誘導するという、従来にない機序が開発された。GABAA受容体を介さないことから、既存の睡眠薬で問題となっていた薬剤耐性、依存性あるいは奇異反応などの副作用が少ない、次世代の睡眠薬として期待されている。2014年9月、不眠症に対する有用性が認められ、製造販売が承認された。通常、成人は 1 日 1 回 20 ミリグラム、高齢者は 1 日 1 回 15ミリグラムを就寝直前に経口投与する。