富山化学工業が開発した抗インフルエンザ薬。商品名は「アビガン」。これまでの既存薬の作用機序であった、ノイラミニダーゼ阻害というウイルスの放出を抑える作用とは異なり、ウイルスのRNA合成・伸長を停止させて抗インフルエンザ効果を発揮する。国内で優先審査を受け、2014年3月に新型または再興型インフルエンザウイルス感染症(ただし、他のインフルエンザウイルス薬が無効、または効果不十分なものに限る)を効能・効果として、国が判断した場合にのみ投与可能な薬剤として承認された。一方、13~14年に動物実験においてエボラウイルスに対する有効性を示す論文が発表され、エボラ出血熱に対しても有効である可能性がある薬剤として、期待されるようになった。14年9月にはフランス政府の要請を受けて、本剤がエボラ出血熱ウイルスに感染したフランス人女性看護師に投与されて治癒した、との報告もなされた。日本国内では追加生産を行い、世界保健機関(WHO)からの要請に対して、供給可能な体制をとっている。14年12月から西アフリカ・ギニアで開始されたエボラ出血熱患者に対する臨床試験で、血中のウイルス量の少ない患者で死亡率を半減させた、という中間結果が報告されており、臨床試験のデータがそろい次第、承認される可能性が高い。