日常の生活では体験しないような、衝撃的な出来事に遭遇した際に生じる「心の傷」をトラウマ(trauma)と呼んでいるが、トラウマへの反応の中で特定の症状を呈する一群の病態がPTSDである。ベトナム戦争からの帰還兵に見られ、国家賠償の対象として取り上げられるようになってから特に注目されるようになった。戦争やテロ以外に、レイプなどの犯罪、大規模な自然災害、交通事故を体験したり、目撃したりすることでも生じる。重大なトラウマに接すると10%前後に見られるとされる。症状は、体験等の一部または全体にかかわる追体験(フラッシュバック ; flashback)、トラウマになった事物や状況に対しての回避傾向、精神的不安定による不安、不眠などの過覚醒症状などである。これらの症状が1カ月以上持続し、社会的機能に障害を起こしている状態をPTSDと呼んでいる。治療ではSSRIなどの抗うつ薬を中心とする薬物治療と心理療法が用いられる。なおトラウマへの反応としては、PTSD以外にもうつ病など様々な心の病が見られるので注意が必要である。