解離性障害とは、意識、記憶、自己同一性などの連続性がなくなり、失われたりすることが主な症状である心の病である。例えば、戦争や災害などショックな出来事の後の記憶喪失や、人格が解離して複数存在する解離性同一性障害(dissociative ; identity disorder、かつては多重人格 ; multiple personality disorderとも呼ばれた)、自分が外部の傍観者であるかのように感じる離人症性障害(depersonalization disorder)などがある。通常、極度のストレスが引き金となって発症するが、自我にとって耐え難い心理的な葛藤(かっとう)や感情を意識的な思考から切り離さざるを得なくなり発症すると考えられる。解離性健忘(dissociative amnesia、心因性健忘ともいう)は健忘の一種であるが、ストレスとなった出来事を思い出せない。全生活史健忘は、名前、住所、出身地、家族など一切の記憶を喪失する状態である。解離性遁走(fugue、心因性遁走ともいう)は、耐え難いストレスとなった場面から遠ざかることであるが、気がついたら、遠く離れた駅のベンチに座っていたとか、極端な場合には、外国にいたとかいうケースもある。離人症性障害では、現実感が乏しくなり、ベールで包まれたような感じになって映画を見ているかのように現実との距離感が生じる。また自分の身体が自分のものでないと感じることもある。治療は、薬物療法と心理療法になるが、この耐え難いストレスをどのように受け入れていくのかということが焦点となる。