身体表現性障害とは、心理的問題が背景にあり、その問題が不安、抑うつ、悲しみなどの精神症状として表れずに、身体症状となって表れるものである。身体症状としては多様な症状が見られ、頭痛、背部痛、腰痛、関節痛、舌痛、顎関節痛などの様々な痛みが生じる。めまい、立ちくらみ、耳鳴り、聴覚障害、のどの違和感などの耳鼻科系の症状、眼痛、視力障害、視野障害など眼科系の症状、胸痛、息苦しさ、せきなどの呼吸器系の症状、動悸、胸の締め付けられる感じなど循環器系の症状、胃痛、胃のもたれ、吐き気、嘔吐、下痢、便秘、腹痛などの消化器系の症状、生理不順、生理痛など婦人科系の症状、頻尿、排尿困難、下腹部痛など泌尿器科系の症状など多岐にわたる。こうした身体症状のために日常生活が妨げられるものが身体表現性障害である。重大な身体疾患にかかっているのではないかという恐怖や考えへのとらわれが見られる場合には心気症(hypochondriasis)という。内科や外科などを受診し適切な医学的評価や説明を受けても納得できず、医療機関を転々とするドクターショッピングになることも多い。治療では抗うつ薬を中心とする薬物療法と心理療法が用いられる。