精神科において抗うつ薬、抗精神病薬、睡眠薬、抗不安薬といった処方薬を、複数かつ多量に処方すること。日本の精神医療の悪習慣といわれてきた。うつ病や統合失調症の治療において、多剤大量処方が有効であるという科学的な根拠はない。むしろ副作用の発現率が上昇するため、患者が不利益を受けるといわれている。また、依存性のある抗不安薬や睡眠薬では、処方薬による薬物依存を引き起こす可能性も否定できない。近年、精神科の学会や厚生労働省も多剤大量処方を行わないよう、医師への専門教育を行っている。全体的には改善している部分もあるが、一部には、いまだ多剤大量処方を行う医師が存在することも確かである。その背景には、医師の裁量権といった点で、学会や行政が、多剤大量処方を行う医師に注意、指導することの難しさなどがある。