日本うつ病学会が、2012年7月に発表した大うつ病性障害の治療指針。他の先進国にくらべ、日本では精神医療の公的な治療指針の作成が遅れていたが、学会として初めてうつ病の治療指針を作成した。うつ病診療のための要点や、その論拠を幅広く説明している。大うつ病を、(1)軽症うつ病、(2)中等症・重症うつ病(精神病性の特徴を伴わないもの)、(3)精神病性うつ病の3つに分け、それぞれ推奨される治療を示している。軽症うつ病への薬物療法に対しては、他の先進国の治療指針でも様々な意見がある中、「少なくとも安易な薬物療法は避けるべき」といった注意が添えられた。欧米の治療指針のような、治療薬選択のアルゴリズムはなく、表現がやや具体性に欠ける部分もあるが、日本の学会が初めて正式な治療指針を作成したことは評価されている。といっても拘束性があるわけではないので、今後、医療者がどれだけ治療指針を理解、実践するかが課題となる。