乳がんには、閉経前のがんと閉経後のがんがある。最近増加しているのは閉経後の乳がんである。大部分は導管から発生する腺がんであるが、より末梢の小葉がんが増えている。導管内の乳頭状腺がんは早期がんと考えられる。検査はマンモグラフィー(乳房X線撮影装置)で行う。男性の乳がんも女性の乳がんの100分の1程度ある。乳がんはエストロゲン過剰状態がリスクとなる。また、更年期のホルモン補充療法もリスクとなった。遺伝的な素因が関係するものも5%程度ある。特に母親や姉妹、おばなどに乳がんになった人がいると、乳がんになる危険度は約2倍になる。乳がんは早期なら90%以上治癒するため、縮小手術が普及し始めた。HER2(c-erbB2)というがん遺伝子の発現があるものは予後が悪い。HER2の遺伝子産物である膜レセプターher2の過剰産生を抑えることで、細胞増殖停止を起こすトラスツズマブ(trastuzumab)が特効薬として開発された。がん細胞がホルモンに依存性なのを利用して、抗エストロゲン作用をもつタモキシフェンなどの薬でがんの増殖を抑える治療も効果的である。