頸部の喉頭にできるがん。喉頭は舌骨(ぜっこつ)、甲状軟骨、輪状軟骨などの骨組織からなる器官で、内腔の上方は喉頭蓋(こうとうがい)から舌根に続き、下方は輪状軟骨の下にある気管へ続く。甲状軟骨の上前端のとがった部分が「のどぼとけ」である。後方左右の披裂(ひれつ)軟骨と、前方の甲状軟骨のとがった部分との間には声帯があるが、喉頭がんの過半数はこのあたりに発生する。したがって、初期症状には嗄声(させい)と呼ばれるかすれ声が出やすい。声門上下のがんは、声帯に進展して症状が出ることが多く、声帯がんよりも予後が不良である。早期の症例に対しては放射線治療、進行した症例に対しては外科治療が施される。進行症例に対する手術は、多くは喉頭全摘出術が適応となる。喉頭の機能温存の観点から、化学放射線療法も治療選択肢の一つになりうるが、喉頭全摘と補助療法に匹敵するかは明らかでない。