病気をすると、身体の一部あるいは全身がむくんでくることがある。これを浮腫(ふしゅ)といい、毛細血管から水分が外に出て、細胞の間にたまるために生じる。血液の液体成分を血漿(けっしょう)といい、たんぱく質を7%ほど含んでいる。このたんぱく質によって生じる浸透圧が、血管中に水分を引き戻す働きをしている。そのため、血液中のたんぱく質が減ると、毛細血管から外に水分が多量に漏れて浮腫が起こる。たとえば、肝臓と腎臓の重症の病気では、血液中のたんぱく質が減少して、全身に浮腫が起こることがある。一方、毛細血管の血圧が高くなっても、血管から水分が漏れて浮腫が起こる。重症の心不全で、心臓から血液を十分に送り出せなくなると、心臓に血液を戻す静脈と毛細血管の圧力が高くなり、全身に浮腫が起こる。全身の浮腫は、このようにさまざまの原因で起こり、原因となっている疾患を突き止めて治療する必要がある。19世紀に浮腫の原因が明らかにされるまで、全身の浮腫は生命に危険な状態として非常に恐れられていた。