脳の下面についた、前後8ミリ、幅10ミリほどの小さな器官で、脳底の下垂体窩(か)という窪みに収まっている。前葉と後葉に分かれて、それぞれ別の種類のホルモンを分泌する。前葉から出されるホルモンには、他の内分泌腺に作用してホルモンの合成・分泌を調節するものと、全身に作用するものがある。内分泌腺に作用するものには、甲状腺刺激ホルモン(TSH ; thyroid stimulating hormone)、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH ; adrenocorticotropic hormone)、性腺に作用する濾胞(ろほう)刺激ホルモン(FSH ; follicle stimulating hormone)と黄体化ホルモン(LH ; luteinizing hormone)があり、全身に作用するものには、成長ホルモン(GH ; growth hormone)などがある。後葉から出されるホルモンには、腎臓の集合管に作用して、尿の濃縮を促進するバソプレシン(vasopressin)などがある。下垂体は、間脳の視床下部から細い茎によってぶら下がっていて、視床下部との間に密接な関係がある。視床下部の毛細血管を通った血液が、再び下垂体前葉の毛細血管を流れる下垂体門脈系によって、視床下部ニューロンから出るホルモンが、下垂体前葉ホルモンの合成や分泌を調節する。また、視床下部にある神経分泌細胞は、下垂体後葉に軸索を伸ばし、そこから下垂体後葉ホルモンを血液中に放出する。