腹大動脈から腹部内臓に血液を送る枝が3本出る。腹腔動脈は肝臓、膵臓、脾臓および胃の一部に血液を送り、上腸間膜動脈は小腸と大腸前半部に、下腸間膜動脈は大腸後半部に血液を送る。肝臓を除いて、これら腹部内臓で毛細血管を通った血液は、いったん門脈に集められ、肝臓に流入する。腹部内臓の静脈血が門脈を通して肝臓に集められるのは、機能的に意味がある。消化管で吸収された糖類は、肝臓で一度貯蔵されてから、全身に配分される。脾臓では赤血球が壊され、その中のヘモグロビンは代謝されて肝臓から胆汁色素として分泌される。肝硬変などにより肝の血流が障害されると、消化管や脾臓にうっ血や浮腫を起こす。門脈の圧がさらに上昇すると、門脈血の一部が迂回路を通って下大静脈に還るため、食道下部や直腸に静脈瘤を生じることがある。