細胞の容器となる細胞膜は、リン脂質やコレステロールなどの極性をもった脂質からできており、イオンを通しにくい。人体の細胞は、ごくわずかな例外を除いて、細胞膜をはさんで細胞内にはカリウムイオンが多く、細胞外の液は、血漿とほぼ同じで、ナトリウムイオンと塩素イオンが多い(ほぼ0.9%)。また細胞膜をはさんで電位差があり、細胞内の方が約80ミリボルト低い。人体のほとんどの細胞は、このイオンの分布と電位差を保って生きており、これが大きく崩れて回復しないことは、細胞の死を意味する。人体の細胞は、この生きている状態を、細胞膜にある二つの装置によって維持している。その第1は、ナトリウム=カリウム=ポンプ(Na-K-ATPase)で、ATPを1分子分解し、そのエネルギーを利用して、3個のナトリウムイオンを細胞外に運び、2個のカリウムイオンを細胞内に取り込む。第2は、カリウム=チャネル(Kチャネル)で、細胞内外のカリウムの濃度差に従って陽電荷をもつカリウムイオンが細胞外に逃げ出し、細胞内の電位がマイナスになる。