「自己決定権」は、バイオエシックスにおける倫理原則、「自己決定(自律)」「恩恵(善行)」「公正」「無害」などの一つであり、また、患者の権利の最も重要なものの一つとされる。従来、患者と医療者(特に医師)の関係は、家父長的温情主義(パターナリズム)を基本に、医療者が患者を指導することをよしとしてきたが、患者中心の医療を強調するバイオエシックスの進展により、医療は、患者の自己決定によることが求められるようになった。このような変化の背景には、生殖や延命の技術が発展し、治療法の選択肢が広がったこと、少数者の人権運動が患者の権利意識を助長したこと、そして、人々の価値観が多様化してきたことなどが挙げられる。しかし、医療における自己決定権が死の選択にまで及ぶ議論では、「自己決定権」の過剰な拡大としての批判もあり、患者の自己決定権の尊重のあり方が議論されている。