「脳死」とは1960年代に人工呼吸器が使用されるようになって生まれた言葉である。脳は機能していないが人工呼吸器によって肺で呼吸が行われ、心臓は動いている状態を指す。しかし、一般にその意味するところは「脳が働いていない(死んでいる)」ということから「人の死」までいろいろである。日本においては現行の臓器移植法では、脳死状態であることを「人の死」とは直接定義していない。「脳死した者の身体」という言葉を使って「死体」とみなしている。世界的に見ても脳死判定基準は様々であるが、「脳死」は大別して「全脳死」と「脳幹死」に分けられる。前者は大脳、小脳、脳幹の不可逆的機能停止状態、後者は脳幹だけの不可逆的機能停止状態を指す。日本は前者の意味で「脳死」としているが、臓器移植法ができて以来「脳死」は法的な概念の意味合いが強まり、事前に本人が「脳死状態になったら臓器提供する」ことを意思表示し、かつ家族が反対しない場合に「法的脳死判定」が行われる。「脳死」の議論は「人の死」が医学的に決められないことを社会に知らしめた。「脳死」に対する最近の意識調査では、「人の死」としてもよいとするのは、国民一般では59%(2005年7月、読売新聞全国世論調査)であるのに対し、医療スタッフでは4割弱(06年4月、厚生労働省研究班)などの報告がある。