「臓器の移植に関する法律」(いわゆる「臓器移植法」)は1997年7月16日公布、10月16日に施行された。この法律では前もって臓器提供の意思を書面で表示し、家族の反対がないことを条件に、移植の場合に限って脳死判定基準による判定が行われる。バイオエシックスの観点からは、臓器提供意思表示カード(→「ドナーカード」)などによる本人の事前の自己決定と、家族による裁量のバランスが問題となる。現行法は施行後3年をめどに見直されることになっており、遺族の書面による承諾や、親族の同意による15歳未満および未成年の脳死者からの臓器提供などを骨子とする「臓器移植の法的事項に関する研究班」による最終報告書がまとめられ、内閣府調査との関連で論議が行われている。主要な論点は、(1)15歳未満の脳死状態からの臓器提供において、本人の事前の意思表示なしに家族の同意のみで脳死判定ができるか、(2)(1)の議論と関連し、脳死状態からの臓器摘出は15歳以上においても、本人の事前の拒否の意思表示がなければ、家族の同意のみで脳死判定できるかにある。2006年3月に「本人の拒否がなければ家族の同意のみで臓器摘出が可能」とする案と、「本人と家族の同意がある場合に12歳以上で臓器摘出が可能」とする案の2案が開会中の国会に提出されたが、国会がその後閉会し、同法改正案は継続審議扱いとなって改正の見通しは立っていない。