一分一秒でも続く生命現象を望むことは、医療にとって絶対的なことであった。そのため医療技術は人間の健康維持、生命活動を保持することに向けられた。しかし、人工呼吸器に代表されるように生命活動の存続を目的とする技術の発展は、根治不可能な病気にも向けられ新たな議論がされるようになった。いわゆるスパゲティ症候群(患者への無益な医療機器の使用状態)や「生命の質」、「人間の尊厳」などをめぐる議論から延命治療への批判もされてきた。がん末期患者への治療停止による「安楽死」の条件付き容認などの議論が高まるなか、北海道で2004年2月、回復の見込みのない患者の人工呼吸器を外した医師が、翌年殺人容疑で送検された。しかし、結局06年8月に嫌疑不十分で不起訴処分となっている。また、06年3月に富山県射水市の病院で、2000年から05年までに7人の患者から本人の意思の確認がない状態で人工呼吸器が外されていたことが明らかになった。これらの事件をきっかけに、「尊厳死」や「治療中止」のルール作り、法制化の議論が高まっている。