2005年10月19日に国連教育科学文化機関(UNESC ; ユネスコ)の総会で採択された世界宣言。アメリカで成立したバイオエシックスの議論は、先端医療技術の社会的受容と患者・被験者の人権を強調し、先進国に特有のものとも受け止められていた。しかし、生命科学や医学の研究への規制問題は、先進各国でも異なることから国際協調の必要性も出てきた。また、先進国の研究者が研究規制の整わない発展途上国で、自国では実施が困難な研究を行う可能性もある。そして、生命倫理の問題には「生命」、「人権」という人類の普遍的課題としての意味もある。このような背景もあり、ユネスコは欧米に偏らないメンバー(36人)からなる「国際生命倫理委員会」(IBC)を組織して議論を重ね、これまでも「ヒトゲノムと人権に関する世界宣言」(1997年)と「ヒト遺伝子情報に関する国際宣言」(2003年)を採択している。新しい「生命倫理と人権に関する世界宣言」は、全部で28条からなり、「インフォームド・コンセント」、「自己決定権」、「プライバシーの尊重」などを示し、科学技術と社会との関係、環境保護、差別の禁止などの基本的原則を取り上げて、その実現のための生命倫理教育、倫理委員会の設置、臓器売買の禁止、バイオテロリズムへの対応などを具体的に提示している。