出生前診断の方法の一つで、体外受精によって得られた受精卵を培養し、4細胞ないし8細胞に分割されたときにその一つの割球(細胞)を取り出し、遺伝病の因子の有無について調べる方法である。受精卵診断とも呼ばれているが正確な名称とはいえない。着床後に調べる絨毛膜採取や羊水穿刺に比べて、着床前の体外での操作なので母体への負担が少ない。しかし、障害の有無による優生学的な対応という点では変わらず、また未分化な割球という細胞が持つ個体になる可能性を中断することについての倫理問題も指摘されている。日本産科婦人科学会は、会告で着床前診断については「重篤な遺伝病に限る」としていたが、2004年7月に慶応大学から申請されていたデュシェンヌ型筋ジストロフィーの着床前診断を承認した。一方、習慣流産(習慣性流産)などに対する着床前診断を実施した産婦人科医に対しては、除名処分を行っている。しかし、06年4月に同学会は、染色体の転座による習慣流産については着床前診断を認め、12月にも習慣流産、ミトコンドリア病についての着床前診断を承認した。なお、07年5月には、日本産科婦人科学会の会告の無効確認を一部産婦人科医たちが求めていた裁判で、会告の着床前診断の制約は違法ではないとの判決が東京地裁でなされた。生殖医療とともにそれに関わる出生前診断に対する法制化を求める声も強まっている。