体外受精などの生殖補助技術の実施において、女性が自らの卵子による受精ができない場合に、他の女性から卵子の提供を受けること。日本産科婦人科学会は、生殖補助技術に関しては、第三者からの卵子提供を認めていない。しかし、学会の会告には法的拘束力がないことから、姉妹間の卵子提供によって体外受精をし、出産した例などが報告されている。2006年10月には長野県の開業医が、娘夫婦の受精卵を使って50代の女性が代理出産したことを公表、卵子提供と代理出産の問題に波紋を広げた。そこには、技術的な安全性の問題のほかに、精子、卵子、受精卵の提供者が誰かによって、複雑な人間関係が生じ、子どもに影響を与える可能性という問題もある。生殖という人格に関わる行為に、第三者の女性の身体をはじめ、卵子、精子、受精卵を「手段」とすることの是非が倫理問題として議論されている。また、最近では、再生医療研究でES細胞作製における卵子提供の手続きも問題視されている。子供を得るという目的以外、研究や治療に使用する卵子の提供については、さらなる倫理的議論が必要である。