体細胞を未分化の状態に戻すことなく、直接的に神経細胞に変えた細胞のこと。マウスの胎児と新生児の皮膚から採取した線維芽細胞に、Ascl1、Brn2(Pou3f2ともいう)、Myt1lの3つの遺伝子を導入し、iPS細胞のような未分化の状態に戻さず、直接的に神経細胞(ニューロン)へと変化させる研究に成功した。2010年1月27日付の英科学誌ネイチャー(電子版)において、スタンフォード大学の研究チームが発表。これまでのES細胞やiPS細胞は、いずれも未分化状態、つまりあらゆる組織・器官の細胞に分化する万能性をもたせ、そこから特定の細胞に分化させる方法をとってきたが、iN細胞は体細胞を万能細胞にしないで直接特定の細胞にする、新しい方法をとったことが特徴であろう。これによってiPS細胞で問題にされた、がん化の可能性が低くなるとされる。しかし、神経細胞に特有のたんぱく質やシナプスの形成が確認されたとして、元の細胞とは異なる神経細胞になったといってよいか検討が必要である、との指摘もある。再生医療におけるES細胞、iPS細胞に続く新しい展開であり、再生医療に対する期待を高めるものになるか注目される。